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2008年9月

2008年9月30日 (火)

America Votes 2008 アメリカ大統領選挙ウォッチャー記~その24メルト・ダウンの渦中で(大統領候補討論会 第1回 ミシシッピ州)

かつて、アメリカで起こった出来事は10年遅れで日本でも起こると言われていた時代があったといいます。

実際同じことが起こったのかどうかは詳細を見なければわからないのですが、おおざっぱに言ってアメリカがたどった軌跡を追いかけてきた、つまり日本がアメリカの背中をずっと追っていて必死に追いつこうとしてきたという意味でもあるでしょう。

それはもちろん敗戦で全てを失ってしまった日本にとって、戦後繁栄の極みに向かって驀進していたアメリカがとても魅惑的で輝いて見えていたからでしょうし、その背中との距離がだんだんと詰まっていくことを国の復興の証と考えたからでもあるでしょう。

いつしか10年遅れであったことが5年遅れで起こると言われ、それが3年の差になり、ついにはほとんど同時に同じことが起こるようになる・・・「グローバリズム」という言葉が他の地域と違ってさして不信も感じず受け入れられた理由でもあります。

21世紀にはいってからこっち、「グローバリズム」の名のもとに日米の時間的距離感は徐々に消えていき、せいぜいその差はマーケットが開く時差程度になってきている現在、日本人にとってはある意味「感無量」とでもいうようなことがここ2週間ほどおこっているのではないでしょうか。

ここのところアメリカで、ウォール・ストリートで、起こっている出来事はどうもいつか見たことがあるような気がする・・・。

ちょうど前世紀末、199798年ごろに日本で起こったことに酷似している。

不動産バブルが崩壊したあと、なすすべもなく放置しておいた結果、未曾有の金融危機に見舞われ、日本発の世界恐慌が始まることだけは避けなければならないと言われ、関係者が奔走していた(といわれる。奔走してホントに何か対策が出来ていたかは不明)日々。

ついに、潰れるはずがないと思われていた都市銀行や大手証券会社の一部が破たんし、次はどこが倒れるかと戦々恐々としていた日々。

では対策に公的資金を注入するか、という話になり、しかし莫大な税金の投入の是非をめぐって喧々諤々と連日ニュースが飛び交っていた日々。

ああ、これは10年前に見た光景だ。

ついに日本はアメリカに追いついて、そして追い越して逆転したのだ。

つまり日本で起こった出来事は、10年遅れでアメリカでも起こるのだ、と。


まあ、現実に今おこりつつあることはそんな感傷的なもんじゃありません。

アメリカは人口は日本の軽く2.5倍(いや実数は3倍いるんじゃないかと私なんかは疑ってますけどね(笑))国土は25倍超もあるからなのか、この度の金融危機=ウォール・ストリート・クライシスも10年前の日本の金融危機の2倍速、3倍速、いや10倍速くらいの進行のしかたです。

とにかく進行が早い。

そして危機的状況があまりにも大きすぎる。

日本の時も世界に波及しないように、って言われてましたけど、アメリカ現在進行形ですでに世界に波及してます。

それだけアメリカは世界のど真ん中に鎮座してる、とでも言いましょうか。

まあ世界の基軸通貨なんだから当たり前です。

ベア・スターンズの破たんから、ファニー・メイ並びにフレディー・マックの救済のあたりでは、世界はこれからどーなるの?くらいの反応だったのですが、リーマン・ブラザース破たん、メリル・リンチの吸収消滅あたりから株価のジェット・ローラーコースター的暴落が始まって(いや、本当の意味で上げる要素がないからこれはラージ・ヒルのジャンプ台といったほうが正しいのか)世界中の株式市場が刻々と続落して、各国で信用収縮とリセッションが起こり始めている状況です。

しかも大問題なのは、誰もこれを予期していなかったわけではなく、去年夏以来「サブプライム問題」という時限爆弾が存在していることがすでに白日の下にさらされていたわけですから、「何かがあとでおこる、きっと。でもどんな事が??」というB級ホラーのような心持ちで1年以上も待っていたのに、その間、これからおこる惨劇への対策の手がまるきり打たれてこなかった、という事実でしょう。

去年、経済問題に疎い私はアメリカでおこりつつある恐ろしげなマネーゲームの悪成果を「???」と思ってその道に詳しい人(仮に、当ブログの「経済顧問」と呼んでおこう(笑))にいろいろ聞いていました。

その時紹介された本が春山昇華さんの著作「サブプライム問題とは何か」(宝島新書)だったんですが、これはとてもとてもわかりやすくこの問題の本質を解き明かしてくれたものでした。

つまり、「証券化」という金融技術の発達によって担保などの後ろ盾もなく焦げ付きなどのリスクもどこかにまぎれこませてしまえるような資金調達が可能になったことと、24時間世界のどこかで株式市場が開いていて四六時中くるくる循環しているのだから責任の所在があいまいになったことで、まったくの素人まで投機などのマネーゲームに容易く参加できるようになり、リアリティもモラルも希薄になってしまったことの問題のつけが、これからイッキにやってくるという重い予言が綴られていたのでした。



「きっとあとでおこるに違いない大惨事」

それがついに、アメリカで始まったのです。


かくして、その混乱の中、なんとか危機にあるウォール・ストリートの金融機関を救おうとアメリカ政府が資金を供出して(つまり税金を充当して)金融機関の不良債権を買い取るために7000億ドル(70兆円強)を用意するという「金融再生化法案」を上下両院の議員が、共和・民主両党の超党派で話し合いを続けるその渦中の先週末、926日夜(日本時間927日午前中)に、当初から予定されていた「大統領候補討論会(テレビ・ディベート)」の第1回がミシシッピ州オックスフォードで開催されました。

すでにご存じでしょうが、この討論会は開催直前までこのウォール・ストリート・クライシスに振り回され、一時はマケイン候補が大統領選挙活動を停止してもこれに取り組むべきだから討論会を欠席すると言いだすなど、討論会開催そのものが危ぶまれていたのですが、結局、超党派の微妙な話し合いに大統領選挙を持ち込むべきではないという議員たちの声もあって、無事開催されるに至ったのでした。

しかし、開催前のドタバタした印象と違って実際行われた討論会は、地味で、可もなく不可もない、という印象を受けたのは私ばかりでしょうか。

それは、今回の討論テーマが「外交・安全保障」というテーマで設定されていたせいでもあるかもしれません。

正直言って、両候補の外交姿勢に微妙な違いはあるとは言え、基本はあまり変わらないし、ただイラク戦争継続をめぐってだけは大きく対立するものの、残念ながら現在の時点ではアメリカ大統領(候補)には外交に関してはほとんど選択肢がないのだな、というのがよくわかったというばかりでした。

だから本当ならば今回の金融危機を受けて、話し合うべきテーマは、「内政・経済問題」こそがふさわしかったのだろうと思われるのですが、なんといっても先ほども書いたとおり、危機の展開のスピードが速すぎる、坂を転がり落ちるほどの加速が強すぎるので、正直言ってうかつな中途半端なことは言えない、ということもたぶんあって、「これも安全保障の一部ですから」という形で討論の冒頭を少し時間を割いて、この危機に対する議会の法案をどう考えているか両候補の立場を尋ねられたのみだったのでした。

もちろん、両候補とも、早急に何らかの手を打たなければならないと言い、法案の可決にむけて自分も力を尽くしたいと訴えたのは言うまでもありません。

しかし、この時点ではまだ具体的に法案の詳細の中身までつめられていなかったのでしょう、具体的に国民を説得する言葉、事例ともあまりにも少なすぎた、としかいえません。

ただただ、国民に理解を求めて同意してもらいたい、可決にこぎつけたい、という言葉にとどまった両候補だったのです。


しかし、これは後になってアダとなったのは言うまでもありません。

この文章を書いている930日現在(日本時間)「金融再生化法案」は議会下院で13票差で否決されてしまったのでした。

そしてこの否決をうけて、アメリカの株式市場は未だかつてない大暴落を記録、1987年のブラックマンデー以来の悲惨な展開になってしまいました。

そして今になって、CNNの視聴者の声の紹介などにも、マケイン、オバマ両候補がどういう対策をとろうと考えているのか詳細を知りたかったとか、今回の議会の法案の中身についてもどんなことが話し合われているのかその中身こそを訴えてほしかった、国民を導くリーダーシップこそを見せてほしかった、といったような声が聞かれているようです。

つまり、どちらの候補も国民の説得に失敗してしまった。

もっと言えば、肝心の議会も、現政権のホワイトハウスも、まったく国民の説得に失敗している。

アメリカ国民は自分たちの税金が何故自分たちのためには使われず、ウォール・ストリートの富裕な人たちのために使われるのか、その理由が納得できないし、それを許せない。

議会も現政権もうまく説明できていないから、このまま放置しておくと、実は廻り回っていずれ一般国民のもとにも危機的状態となって波及することを理解させることができない。

ただ、富める者のための対策にしか見えないし、貧しき一般国民には関係ない対策にしか見えない。

どうしてそうなってしまうのか?

それはたぶん政治家が、政府関係者たちが、自分を最大リスクに曝してこの危機に対峙しようとしている姿勢を見せられない、ということに尽きると私は思います。

私にとって不思議でしょうがないのは、アメリカ建国以来の危機だというここに至っても、閣僚のひとりも、議員のひとりも、自分の俸給を返上して国民を説得しようという人物が出てこないことです。

まず、大統領、副大統領から自分の資産を国に納めるくらいの責任をとってしかるべきだし、もちろん救済される側の金融機関のトップたちは退職金も俸給も返上に決まっている。

それどころか、今後FBIの捜査が入るならば、責任ある者たちからこの危機に至るまでの間に不当に儲けた全財産を賠償させるくらいの気持ちでないと今後の進展は一切ないのではないか。

(これはもちろん「グローバリズム」の時代ですから、アメリカ国内だけの問題ではありません。アメリカ国外にも焼け太りした悪人たちがいっぱいいるはずです。いずれハーグの国際裁判所の経済裁判所版を国際的協力のもとに作るべきです)

とにかく、指導者が身を切って見せてこそ、国民は彼らを信じるのです。

それこそが、「信託」というものです。

そして、そういった「責任」が存在しなければ、真の「自由」なんて存在しないと知るべきです。


こうした理由で私的には、今回のアメリカ大統領候補討論会がかなり色褪せてみえてしまった次第です。

当ブログの経済顧問(仮)からこんな言葉が届いていますので紹介しておきます。

「今回の危機は実は金融システムの問題だけでなく、アメリカの社会システムの問題でもある。

アメリカには今の大量消費型の社会システムにのっかった生き方ではなく、別の生き方を考えてほしい。

果たして、家族3人で暮らすのに5つもベッド・ルームがあるような家が必要なのか?通勤に片道3時間も自家用車を運転して通うような暮らしが正しいのか?サブプライム住宅に引っかかった心理の奥にあるのはそういうことだ。

それが乗り越えられない限りこの危機は根治しない。ただの対処療法になるだけだ。新しい21世紀の社会システムに移行しなければアメリカは病み衰えていくだけだ。

かつて1992年か93年のころ。

天安門事件後の中国では、社会主義の限界が露呈し社会が停滞していく中、とにかく改革しなければ全てが崩壊してしまう瀬戸際だった。その時改革の指導者を任された朱鎔基が所信表明にこう演説したという。

「棺桶を100個用意しろ。そのひとつは私が入るために」

それまでの社会システムを変えるということはかなりの覚悟のいること。でもやらなければ社会も国家も崩壊してしまうというなら、もう覚悟を決めてやるしかない。

相討ち覚悟で改革した朱鎔基と同様のかなりの覚悟を持って、アメリカの次の指導者には進んでいってほしい」

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2008年9月 6日 (土)

America Votes 2008 アメリカ大統領選挙ウォッチャー記~その23勝利の記憶は苦く(共和党全国大会 9月1日~4日)

戦争というものは、困難な局面だらけだ。

戦争に突っ込む時も、戦争の最中も、どうやって戦うか間断ない究極の決断を迫られてばかり。

そしてまた、その戦争が終わる時。

どうやって終わらせるか、どうやって兵を退けるのか、決定するのは困難だ。

しかし本当の、一番の困難は実は戦争後。

戦争という非日常からどうやって平和な日常に戻っていくのか。

それが敗戦ならば戦争に責任ある者たちの責任を追及して、すべてを新しく仕切り直す。

国民は後悔と屈辱感に満ちながらも、きっと二度と同じ間違いを犯すまいと誓う。

しかし、その戦争が勝利による終結ならば。

すべてを新しく仕切り直すのはとても困難になる。

勝利の記憶は長く残り人々の誇りとなるけれど、その誇らしい記憶こそが実は長年の歳月をかけて人々を蝕む。

何時いかなる時も勝利せねばならない、と。

なぜ、なんのために勝利するのか。

その勝利の「目的」が忘れ去られたあとも。



今週は91日から共和党全国党大会(レパブリカン・ナショナル・コンベンション)が開催されてきました。

二大政党のもう一方の片割れ、共和党が4日間華々しく大会をとりおこなう予定だったのですが、いきなり初日はメキシコ湾岸地域にハリケーン・グスタフが上陸するという警告が発令されメキシコ湾岸地方の人たちが200万人も一斉避難することになり、すっかり出鼻をくじかれた形になってしまいました。

党大会の開催場所はミネソタ州セント・ポール、エネルギー・センター。

もちろん湾岸地方からはるか遠い場所ですが、3年前のハリケーン・カトリーナによって引き起こされた大災害(現政権の数多い最悪な失政のひとつ)の記憶も蘇り、今回も対応を過てば共和党にとっては大失点になってしまうため、とても慎重に対応され党大会初日は党綱領を採択したのみで解散となったのでした。

よって2日目が実質の大会初日となりました。

当初予定では現ブッシュ大統領が演説する予定だったといいますが、グスタフ対策で湾岸地域に張り付き、ということでビデオ・スクリーンによる演説となりました。

実はこの不人気な現職大統領が出てきてマケイン候補と一緒に立てば、それだけで現政権と同一視されるというデメリットが出てくると予想されていて、本音をいえばツー・ショットになりたくないマケイン陣営だったためこの決定にホッとしていた、と囁かれたのでした。

マケイン候補の立場では、なるべく現政権とは距離を置く、しかし共和党内の一致した支持はとりつけたい、というわけでいたしかゆしというところでしょうか。

共和党の外に目を転じれば、明らかにアメリカの一般国民は現政権に不満いっぱい、ホワイトハウスとワシントンを変えてくれる「改革者」を求めている。

それなのに、共和党は相変わらず保守派が主流で、さすがに4年前のような妄信的なブッシュ支持者でなくなったとはいえ、いまだ現政権支持者が多い。

でも、マケイン候補はその両方から支持をとりつけないとこの選挙には勝てない。

この矛盾した状況。

今回の党大会が始まる前は民主党の方ばかりが分裂の危機があると言われてきていたのですが、実は共和党の方がもっと政策的で根本的な分裂の危機があり、その危機を回避するのがマケイン陣営にとっては最優先課題であったはずです。

かくして、マケイン候補はここ数カ月の間、それまで共和党の多数派に与せず独自に貫いてきていたポリシーを徐々に修正して保守派に歩み寄ってきていたのでした。

例えば、移民法改正問題は民主党とともに法案作成をしていたはずなのに、結局賛成票を投票せず。

現政権の行った富裕層への減税措置も反対していたはずだったのに、結局賛成し自分が政権を担っても続けると表明。

とどめは、もともと環境保護派で地球温暖化対策にも熱心だったはずのマケイン候補が以前は反対していた沿岸部や保護区の油田掘削に賛成し始めたこと。

民主党側からは、彼は変わってしまった、自分の知っていたジョン・マケインではない、という言葉さえでるほどに。

こうして少しずつ党内で歩み寄りをつづけながら、それでも党外に対しては自分がこれまで「一匹狼」として行動し、民主党と協力して様々な法案を作ってきたのだと、その「実績」があるのだ、若いオバマ候補には「実績」がないのだ、とそのイメージを定着させようと努力をしてきていたのでした。

そうした事情から2日目のメイン・スピーカーは元民主党所属、しかも2000年選挙では民主党の副大統領候補でさえあった、ジョー・リーバーマンが務めたのです。

(リーバーマンについての詳細は前回記事を参照してください)

共和党主流派である保守派とマケイン候補とリーバーマン上院議員。

その三者を結ぶ共通項、固い絆は「イラク戦争」

この不人気な戦争を正当化し「戦争に勝つまで続けなくてはならない」と主張すること。

いわく「アメリカは戦争に勝たなくてはならない」



「戦争を勝つまで続ける」

この一事に共和党大会は収束し始め、過去の冷戦時の「強いアメリカ」の時代を回顧するノスタルジックな映像が流れ、現在のテロの脅威に立ち向かうことを声高に演説され、それをもってしてマケイン候補の応援とする流れになっていきます。

大会3日目は春先に予備選挙をともにライバルとして戦った、ハッカビー元候補、ロムニー元候補、ジュリアーニ元候補がそれぞれ推薦のスピーチをし、いよいよ話題の副大統領候補サラ・ペイリン州知事が最後のメイン・スピーカーとして登場。

マケイン候補が軍人として政治家としてどんなに国につくしてきたか戦ってきたかそれを褒めたたえ、民主党側を痛烈に批判、また自分も戦うことを宣言し戦闘的な副大統領候補受諾演説を展開しました。

場内に響き渡るのは例の「USA」コール。

そして、人々の手に握られたのは国家への奉仕を支持するというプラカード。

国民への奉仕ではなく、あくまでも国家への奉仕。

その証は、イラク戦争を支持すること。

それは4日目によりはっきりとしました。

4日目の会場で大きくスクリーンに映し出され、人々が持つプラカードにかかれた言葉。

Country First 」



この言葉はむろんよく知っている、日本人ならば。

訳すならば

「お国のために」

むろん、今の日本人にとって、ほとんどの場合ギャグでしかない。

知っているから。

この言葉のせいで60数年前、日本人がどんなに辛酸をなめたか。

この言葉の魔力に支配されて、どんなに無謀で無意味な戦争に突入していったか。

そして、この言葉の魔力から解放されたのは、他ならぬアメリカとの戦争で、国中が焦土となってすべてを失い、敗戦を受け入れて、すべてを新しく仕切り直すことができたから。

今、その勝ったはずの国がこの言葉の魔力に支配されて、始めてはならない戦争を始めてその泥沼にはまっている。

国中に湧き上がる戦争をやめようという声にも耳を閉ざし、仮にも大統領候補となった人が自分のそれまで築いてきた政治家としてのポリシーも評価もすべて投げ出して、この無意味な戦争の継続にかけるという。

そのことの恐ろしさ。

そのことの虚しさ。

今テレビの前から駈け出して、この場所に行って、会場内の人々に言いたくなる。

あなた方がやっていることは、昔あなた方があなた方の敵国に「間違っている」と知らしめたことではないのか、と。

どんな国でも、そこに住む人々抜きではなりたたない。

国民のためでないのに、お国のためなんてありえない。

それを私たちの祖父母、祖祖父母たちに教えたのは、あなたたちの親や祖父母たちだったのではなかったのか、と。



共和党大会の4日目。

そのラストは当然、指名候補たるジョン・マケイン候補の受託演説です。

彼は自分のこれまでの来歴を語り、アメリカのためになりたいと思って軍人や政治家をやってきたのだと、それゆえ今また大統領になりたいのだといいました。

むろん国内の問題を解決し人々を助ける道も探したいし、小さな政府をめざし、無駄遣いをやめ、減税もするのだ、ともいいました。

しかし、減税しながらどうやってイラク戦争の戦費を調達するのかはひとことも言いませんでした。

また赤字国債を大量に出して、それを外国に買ってもらうのか、そういうことは一言もない。

ましてや、これまでアメリカ国債を買い続けた東アジアの2国、日本は空前の政府財政赤字がついに国民生活にもじわじわと影響を現し始め年金も健康保険も破たん寸前で外国債を買ってる場合でないとか、もうひとつの国、中国も先の大地震で13兆円とも言われるような復興資金が必要で同じく外国債など買ってる場合ではないとか、そういうことは一言もない。

それなら、結局中東のオイル・マネーで潤う国にアメリカ国債を買ってもらって戦費調達せねばならず、結局そうやって中東のパワー・ゲームにいよいよまきこまれて本当の泥沼にはまっていくかもしれない、そういうことも一言もない。

だが、強いアメリカ、正しいアメリカ、そのアメリカの威信を保つためにイラク戦争に勝ちたいのだという。

彼の記憶、それは真珠湾攻撃の報を聞いて戦地に出兵していった父の、祖父の姿。

第二次大戦で戦いに勝った、その誇らしい記憶。

その記憶に縛られてばかり。

むしろ戦争の勝者の方が痛ましいと思えてしまうのは、私の皮肉な見方なのか・・・



アメリカはいずれにしても過去を20世紀を、清算しなくてはならないのではないでしょうか。

そのための正しい選択をアメリカ国民はしてくれるのでしょうか。

エネルギー・センターの人々の手に握られた「Country First 」

そのプラカードを見つめながら、いよいよ始まった本選の、アメリカの未来、そして世界の未来を想うのでした。


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2008年9月 1日 (月)

America Votes 2008 アメリカ大統領選挙ウォッチャー記~その22決断の時・Part2(共和党副大統領候補)

先日、今度は共和党の大統領指名候補となる予定のジョン・マケイン上院議員の副大統領候補が発表され、驚きとともに受けとめられました。

まあ、マケイン候補は独自の行動をすることで知られているから・・・とマスコミなどでも言われていて、変化球は予想されていたようですが、それでもかなりの驚きだったみたいですね。

私もまた「驚きの選択もあるかも」とここで書いておきながら、相当驚いてしまいました。

それというのも、想像してたのとだいぶ違うなあ、という印象だからなんですけどね。


マケイン候補のランニング・メイトは、サラ・ペイリン現アラスカ州知事。

1964年生まれの44歳。

アラスカ州知事は在任まだ2年。

その前は同州ワシラ市の市会議員2期、市長2期の地方政治家であり、ワシントンにおいてはほとんど無名に近い「フレッシュな存在」。

また、5児の母で、一番末の子供はまだ赤ん坊の「現在進行形働くお母さん」といった面ももつ。

共和党としては、マケイン候補に不足していると言われている女性有権者票、それもつい先日までデッド・ヒートを繰り広げていた民主党のヒラリー・クリントン上院議員の熱烈な支持層であった女性票を取り込めるのではないか、との目論見もあるといわれています。

確かに、共和党が女性の正・副大統領候補を出してきたことはこれまでになく、初の候補となります。民主党を含めても1984年以来なのでまだ史上2番目なのだそうで、アメリカ政治における女性政治家の困難さがしのばれます。

だから、この候補選択はとりあえずどちらの党支持かということは横においても、女性候補誕生というだけで両党女性政治家、関係者から祝福は受けたようではあります。

ただ、女性だ、というだけでマケイン候補陣営がいうところの「ワシントンを改革する新しい力となる」と人々が受けとめてくれるのか、というとそれはまた別の問題なのではないか?と思われるのです。


というのは、ペイリン候補のことをいろいろ調べてみるとよってたつ政治的立場はかなり保守的な右派であることがわかるからです。

財政縮小派であり、福祉などの政府支出は抑えていく方向を主張。

全米ライフル協会の会員で銃所有を擁護、銃規制には反対。

アメリカではしばしば政治的焦点になる同性婚には反対。

また、熱心な宗教右派であり進化論を公教育で教えることに反対し聖書の創世記を教えるべきだと主張していたパット・ブキャナン氏の支持者であったという、いわゆる「生命倫理重視派」で女性の中絶権は認めない、義務教育下の性教育は認めない、といった宗教保守派。

また、アラスカ州が地元だというだけあって石油業界、ガス業界と密接な関係があるといいます。

特に石油業界に対して知事就任後課税率を高めて税収を上げたことが評価されているようですが、基本的に石油業界にはどんどん地元を開発してもらってそれで税金もどんどん納めてもらう、といった方向で、近年しばしば討論されているアラスカの北極圏の自然保護区における石油油田開発には積極的な推進派。

こうして並べてみると、ヒラリー・クリントン上院議員を支持していた民主党支持層とは方向性がまったく違うことがよくわかります。


ついでに言わせてもらうなら、マケイン候補ともまたかなり方向性が違うのではないか?とも感じられたりもします。

もともとマケイン候補は上院議員としての仕事の経歴をみてみると、どちらかというと民主党との超党派の活動で評価されてきた政治家で、政治資金法の改正やロビーストの規制についての法案に注力してきた人物なので、いわゆる「中道右派」といった感じの立場できたといえると思います。

だから、共和党内の保守派からは煙たがられ一匹狼と揶揄されることも多く、共和党の中で同様の「中道右派」がブッシュ政権のこの8年間で大きく減少して力をなくしていたこともあって、むしろ現在は民主党の方に友人が多いようなありさまでした。

だから、去る2004年の大統領選挙では民主党の大統領指名候補であったジョン・ケリー上院議員がマケイン候補を副大統領に選ぶのではないか、という噂も駆け巡ったほどです。

その噂は実現しなかったのですが。

もし実現すれば民主・共和相乗りの候補が生まれたことになり、ある意味アメリカの政治の転換点のひとつになったかもしれないのです。


実は今回はそのような「実現」がされるのではないか、と私は密かに思っていました。

というのも、年初にも書きましたが、アメリカではもう二大政党制にうんざりするような国民感情がかなり蔓延しており、これまではあきらめがちに政治から遠ざかっていた無党派層が、さすがにイラク派兵、経済の失墜、国民福祉の大幅な低下、そしてなによりテロとの戦いの名目のもと自由を尊ぶアメリカの国民性を逆なでる政府による監視強化、といったことがらに無関心ではいられなくなり、政治に関心を持った大きな力となるのではないか、と考えていたからです。

またその感情の流れが、民主党においてはまだ無名だったオバマ候補を、共和党のおいては保守派の主流からはずれていたマケイン候補を選ばせた、ともいえるわけです。

たぶん政治家が思っているよりも今の一般の国民感情は革新よりなのではないか、と。

生活が悪状況にある時、当然ひとはそれを変えたいと思うだろうから、革新を求めるのはあたりまえといえばあたりまえなのです。

マケイン候補は今回、このカードを手に持っていたといえます。

最後まで、副大統領候補の可能性のある人材リストの中にジョー・リーバーマン上院議員の名前が囁かれていたからです。

リーバーマン議員は元民主党、現在は無党派で2004年の上院選挙を勝ち抜き、議会においては会派としては民主党と行動をともにしていますが復党はしていません。

この人は民主党では最右派であり、イラク戦争推進派であるのでマケイン候補と政治的立場がかなり近いといわれており、今回の大統領選挙では党派を越えてマケイン候補を支持するとして予備選挙を手伝ってきました。

リーバーマンはご存じのとおり、2000年のあのいわくつきの大統領選挙で、民主党の指名候補のアル・ゴア元副大統領の副大統領候補であった人物です。

もし、マケイン候補のランニング・メイトになることが実現したら、民主党にとってはやっかいなことになるのではないか。

私もまた「その可能性もある」と思い、とても興味深くこの行方を見ていたわけです。


しかし、今回もまたそれは実現しなかった・・・。

まあ、そう簡単には二大政党制は揺らがない、ということなのでしょうか。

マケイン候補は共和党内の保守派に歩み寄ってペイリン知事を選ぶという結果になったのでしょう。

確かに共和党内の固定層はこれで安心するのかも。

しかし、その党の外にも支持を拡大できないと、今回の選挙戦はとても勝てるとは思えません。

やはりアメリカの状況は外交も内政も良い状態とはいえない。

現状維持の保守では、とても人々が納得するとは思えないのです。

果たして、この驚きの「選択」が、功を奏するのかどうか。

ペイリン知事は共和党支持者層外の人々の支持を集めることができるのか。


それはもうしばらく様子を見てみないとなんとも言えない、というところでしょうか。

いよいよ明日から、今度は共和党の党大会が始まります。

ここへきて巨大ハリケーンの到来が予想され、かなりの日程変更を余儀なくされそうだ、といいますが、この4日間を先週同様注意深く見守っていくつもりです。

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